2011年3月22日火曜日

【読書メモ】【経済学】人口負荷社会②

人口負荷社会②では、私が勝手に興味を持った第9章についてまとめてみたい.



第9章 人口オーナス下の産業・企業
本書第9章では、人口現象が国内の市場規模を縮小させるのかを検証している.筆者の答えは、規模は縮小しないということである.そうするとよくテレビや新聞などの報道でよく目にする、「国内市場の拡大が見込めず、海外に進出」という文句は全くの間違いだということなのだろうか.この点について本書の要点を整理したい.

1.輸出と国内需要
筆者は、報道でよく目にする「人口減少で国内市場規模が縮小するので輸出頼みになる」という議論は論理的に間違いだと指摘する.これは仮に人口減少下だとしても輸出が増えると、一人あたりの所得が高まり、その所得を国内の財・サービスに使えば国内需要が拡大するからである.したがって輸出頼みになったとしても、輸出で設けたお金を使えば、国内の市場が収縮する可能性は低い.

2.名目GDP成長率
また、数値的にも人口減少で国内市場は縮小しないと主張している.名目GDPの変化率=人口変化率+一人あたり名目GDPの変化率を用いてデータを検証すると、一人あたり名目GDPの増加率は2006年〜2030年の間の人口減少率を上回る可能性が高い.そしてデフレーターがプラスになれば、名目GDP成長率はさらに高まる.

3.人口減少=国内市場規模縮小論
それでは、なぜ「人口減少=国内市場規模縮小論」が支配的であるのか.筆者は次の2つの要因を挙げて説明している.
①現に市場が縮小しそうな産業・企業のミクロレベルの議論をマクロレベルに延長してしまっている.(国内向けしか作っていなかった企業が生き残りのために海外へ進出し、稼いだお金が国内で使われると、シルバーマーケットのような市場が生み出されるはず)
②量と質について錯覚を起こしている.食品・教育業界は、人口や学生が減るとマーケットが縮小するように思われるが、質(付加価値)が低くなるとは限らない.むしろ付加価値を高め、消費額を増やすことに成功すれば、マーケットの規模(消費量×消費額)は縮小しない.

2 件のコメント:

  1. 輸出が増えれば国内市場が拡大する、というのは乗数効果が働くからでしょうか。このへんがちょっとすっきりしなかったので。

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  2. 目の覚めるようなコメントをいつもありがとうございます.本書には乗数効果がということは書かれていなかったと思いますが、おそらく、輸出が増えると乗数効果が働き…ということなのでしょう.ただし、輸入を一定として考えていると思います.

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