おススメ度★★★★☆
本書の目的はアイディアや流行・社会的行動などが短期間で劇的に広がる(これをtipping pointと本書では呼んでいる)理由やそのメカニズムを解明することであり、筆者は様々な事例を分析し、それらの事例の共通するものを抽出することに成功している.その共通項とは①少数者の原則②粘りの要素③背景の力である.
①少数者の原則
少数者の原則の「少数者」とはアイディアや流行、伝染病などが広まる初期の段階で重要な役割を果たす人々のことである.具体的には、(本書の後半でより詳細な登場人物が紹介されるが)コネクター、メイヴン、セールスマンのことを指す.
コネクター
他の人々と比べて様々な人々とつながり(強いつながりから弱いつながりまで)を持つ人々.このネットワークを通じて多くの人に伝達される.
メイヴン
ある事情に詳しい人々.誰かにその情報を伝えたがっていることが多い.ある事情に詳しい分、聞き手は信用しやすい.
セールスマン:
説得のプロ.納得していない相手に説得してすすめる.特徴的な点は、コネクターやメイヴンとは異なり相手を説得するということである.
②粘りの要素
粘りの要素の「粘り」とは、人々の記憶にアイディアやメッセージがどの程度残りやすさを示す言葉である.つまり粘りが強ければ強いほどそれは人々の記憶に残りやすくなる.本書ではセサミストリートや広告などを例にあるメッセージを人々により残りやすくする方法を紹介している.そして、その粘りを持たせる最も良い方法は、そのメッセージの内容そのものではなく、その提示方法に工夫を加えることである.
③背景の力
人々の行動や伝染病は思っている以上に環境に影響を受けているという.このように私たちをとりまく環境や状況から受ける影響を背景の力と本書では呼んでいる.本書では地下鉄の落書きを例に挙げて代わりの環境がどのくらい人々に作用しているのかを明らかにしている.(地下鉄では犯罪が多かったが、その犯罪撲滅のために取り組んだ方法は、地下鉄の落書きを消す方法であった)
おわりに
本書の前半ではこれら3つの原則を様々な事例に即して説明しており、その議論は特に心理学の視点に立脚している.そして本書の後半では3つの原則が複雑に作用し合った事例を紹介している.本書が教えてくれる重要なことは、爆発的拡大を生む3つの原則だけではない.それはそうした拡大が実は、ちょっとしたことから発生しているということだ.
私たちは何かを始めたり動かしたりするときに、それらを加速させ流行を生むきっかけを案外見逃しているのかもしれないということを常に心に留めておかなければならない.
はやるモノの中身は影響ないんですかね。
返信削除どんなにしょぼいものでもコネとインパクトで売れる?
なんでこんなものが…ということはよくありますよね.
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