「人間の能力や性格などひとりひとりの心の働きや行動の特徴が遺伝子の影響を受けている」
を明らかにしているのが安藤先生の「遺伝子の不都合な真実」。
「すべての能力は遺伝である」という副題も衝撃的です。本書の表紙だけを見れば、遺伝子は選ぶことはできないで、絶望的になったり、優生学の復活?となってしまいそうですが、本書を読み進めれば、そうした先入観は間違いだとすぐに気づきます。
本書では、行動遺伝学的に遺伝子の能力や性格に与える影響を紹介することで、双生児法を用いた実証研究によると、遺伝と行動の関係には次の3つの原則があるそうです:
- 行動にはあまねく遺伝の影響がある
- 共有環境(家庭の雰囲気など)の影響がほとんど見られない
- 個人差の多くの部分が非共有環境(交友関係など)から成り立っている
本書によると、遺伝によって能力、性格、行動が決まるのですが、遺伝のそれらに与える影響の出方は環境に左右されるようです。これを行動遺伝学では、遺伝・環境間交互作用と呼ぶそうです。たとえば、落ち着きがないなどの感情問題を遺伝的に抱えやすかったり、そうでない子ども(3〜4歳)がいることは確かですが、親の養育態度のあたたかさで、その出方は変化するようです。つまり、同じ遺伝的特徴を持っていたとしても、親の養育態度があたたかい場合、つめたい場合と比べて感情問題を引き起こしにくくなるようです。
遺伝子と環境、遺伝子と能力など複雑な関係を示してくれるすばらしい一冊です。
*双生児法
遺伝子をほぼ100%共有する一卵性双生児(MZ: monozygotic twins)と、約50%だけ共有する二卵性双生児(DZ: dizygotic twins)の類似性を比較することによって具体的に遺伝子を特定しなくても、ある行動に対する遺伝要因と環境要因の効果を統計的に推定する方法
(双生児法を用いた研究では、たとえば数学の能力は約90%が遺伝によるもの!)
応援よろしくです.
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